令和8年(2026年)6月の障害福祉サービス等報酬改定では、福祉・介護職員等の処遇改善加算について、その対象範囲と算定構造が大きく見直されます 。今回の改定は、賃上げの対象を相談支援従事者等へも広げると同時に、ICT活用などの業務改善を報酬に反映させる仕組みを導入した点が大きな特徴です 。
厚生労働省の検討チーム資料に基づき、実務に即した主要な変更点を整理します。
処遇改善対象の拡大と賃上げの全体像
今回の改定では、福祉・介護職員に限らず、障害福祉従事者を幅広く対象とした賃上げが計画されています 。
全従事者を対象とした改善: 障害福祉従事者を幅広く対象に、月額約1.0万円(3.3%相当)の賃上げを実現する措置が講じられます 。
相談支援従事者への加算新設: これまで処遇改善加算の対象外であった計画相談支援、障害児相談支援、地域相談支援についても、新たに加算が創設されます 。
相談支援の加算率: 新設される相談支援系の加算率は、一律「5.1%」に設定されています 。
定期昇給を含めた目標: 福祉・介護職員については、定期昇給分(0.6万円)を含め、最大で月額1.9万円(6.3%相当)の賃上げを目指す内容となっています 。
「ロ」区分(生産性向上枠)の導入と対象サービス
今回の改定では、ICT活用や業務改善(生産性向上)の取り組み状況に応じて加算率が変動する「ロ」区分が導入されます 。
「ロ」区分の新設: 現行の加算I・II(イ)に加え、生産性向上や協働化に取り組む事業所を対象とした「加算Iロ・IIロ」が新たに設けられます 。
対象となる主要サービス: 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、施設入所支援、短期入所、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスなど、幅広いサービスが対象です 。
上乗せ措置: 生産性向上の要件を満たす「ロ」区分を算定する場合、福祉・介護職員を対象に月額約0.3万円(1.0%相当)がさらに上乗せされます 。
加算率の具体例: 例えば生活介護の場合、加算Iイが9.3%に対し、生産性向上要件を満たす加算Iロは9.7%となります 。
「ロ」区分(生産性向上枠)の算定要件
新区分の「ロ」を算定するためには、以下の「令和8年度特例要件」を満たす必要があります 。
生産性向上に関する取組: 職場環境等要件のうち、生産性向上に資する取組を「5つ以上」実施することが必須です 。
具体的な取組例: 5S活動の実践、業務手順書の整備、業務支援ソフトやタブレット端末の導入、介護ロボットやインカムの活用などが例示されています 。
賃金配分のルール: 加算II口相当の加算額の2分の1以上を「月給(基本給または決まって支払われる手当)」で配分することが求められます 。
経過措置: 令和8年度中の対応を誓約することで算定を開始でき、実績報告書で実施状況を確認する柔軟な運用が認められています 。
職場環境等要件の見直しと公表義務
加算を算定するための前提となる「職場環境等要件」についても、項目数や公表ルールが整理されます 。
必要項目数の増加: 加算I・IIを算定する場合、区分ごとに2つ以上(生産性向上は3つ以上かつ現場の課題の見える化が必須)の取組が必要となり、全体で14項目以上の実施が求められます 。
取組内容の公表: 情報公表システム等において、各項目ごとの具体的な取組内容を公表することが求められます 。
返還規定: 要件の未対応が確認された場合には、加算額の一部または全部を返還させる仕組みが明記されました 。
実務上の留意点と今後の対応
今回の改定案からは、国が「ICT活用による業務効率化」と「月給(基本給又は決まって支払われる手当)による処遇改善」を並行して進める姿勢が示されています 。
月給配分の重視: 一時金(賞与)ではなく、基本給等の「月給」での配分がこれまで以上に重視されるようになります 。
事務負担の軽減: ICT導入によって直接支援以外の事務時間を削減し、その成果を職員に還元する体制構築が期待されています 。
相談支援の体制整備: 新たに対象となる相談支援事業所においては、賃金体系の整備や研修の実施といったキャリアパス要件への対応が必要となります 。
まとめ
令和8年度の処遇改善加算の拡充は、事業所にとって職員の処遇を改善する機会であると同時に、運営の効率化を検討する契機でもあります。
特に「加算Iロ・IIロ」の新設は、テクノロジーを活用して現場環境を整える事業所を評価する仕組みといえます。一方で、算定要件や公表義務の遵守には、より適切な管理が求められます。
当事務所では、行政書士および精神保健福祉士の知見を活かし、新区分の算定に向けたシミュレーションや、職場環境等要件の整備をサポートしております。制度の詳細は今後発出される告示等により確定しますが、早期の準備が安定的な運営に繋がります。
参考資料: 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(案)」 (第53回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム/令和8年2月18日公表)
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