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成年後見制度が26年ぶりの大改正 終身制廃止で何が変わるのか

成年後見制度が26年ぶりの大改正 終身制廃止で何が変わるのか

公開:2026/4/24 06:04

 2026年4月、政府は成年後見制度の抜本的な見直しを盛り込んだ民法改正案を閣議決定し、今国会に法案を提出しました。成年後見制度が2000年に創設されて以来、約26年ぶりとなる大規模な改正です。法案が成立すれば、2028年度中にも新制度の運用が開始される見込みです。

 認知症高齢者が約700万人に達すると推計される中、成年後見制度の利用者数は約25万人程度にとどまっています。利用率がわずか4%という数字が示すように、現行制度が一般に親しまれているとは言えません。今回の改正は、こうした課題を解決し、利用促進を図ることを目的としています。

法務省が示した現行制度の課題

 法務省は2024年2月、法制審議会への諮問において、成年後見制度に対する主な指摘として以下の点を示しました。

  • 利用をやめることができない:利用動機の課題(例えば遺産分割)が解決しても、本人の判断能力が回復しない限り利用をやめることができません。

  • 本人の自己決定が必要以上に制限される:成年後見人には包括的な取消権、代理権があり、本人の自己決定が必要以上に制限される場合があります。

  • 後見人等の交代が実現しない:本人の状況の変化に応じた成年後見人等の交代が実現せず、本人がそのニーズに合った保護を受けることができません。

 これらの課題は、利用者や家族から長年指摘されてきたものです。専門職後見人に月額2万円から6万円の報酬を終身にわたって支払い続けるケースや、遺産分割のためだけに後見人を選任したつもりがその後も制度が継続するケースなど、制度の硬直性が利用をためらわせる大きな要因となってきました。

改正の3つのポイント

 今回の改正案は、これらの課題に対応するため、3つの大きな変更を盛り込んでいます。

1. 3類型の「補助」への一本化

 現行制度では、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれていました。改正案では、これを「補助」に一本化します。補助人に与える権限は、遺産分割や不動産処分など必要な範囲に限定し、本人の自己決定権をより尊重する仕組みになります。

2. 終身制の廃止

 改正案の最大のポイントは、制度利用を途中で終了できるようにする点です。家庭裁判所が制度利用の必要がなくなったと認めた場合、補助開始の審判を取り消すことができるようになります。これにより、必要な期間だけ制度を利用することが可能になります。

3. オーダーメイド型支援の実現(補助の拡張)

 改正案では、現行の「補助」を拡張し、特定の行為の代理権のみを付与する柔軟な仕組みが整備されます。例えば、遺産分割協議の代理権のみを補助人に与え、手続きが終われば支援を終了できるようになります。不動産の売却、保険金の受領、施設入所契約の締結など、必要な行為だけを個別に設定できる「オーダーメイド型支援」が可能になります。

改正の背景

 今回の改正に至った背景は大きく二つ挙げられます。

 一つは、国内的な要請です。2022年3月に閣議決定された第2期成年後見制度利用促進基本計画において、国が成年後見制度の見直しに向けた検討を行うことが明記されました。この基本計画では、障害の有無にかかわらず尊厳のある本人らしい生活の継続や、本人の地域社会への参加等のノーマライゼーションの理念を十分考慮した上で、成年後見制度利用促進専門家会議における指摘も踏まえて見直しを進めることが示されています。

 もう一つは、国際的な要請です。2022年、国連の障害者権利委員会は日本政府に対し、意思決定を代行する制度(法定後見制度)の廃止を勧告しました。障害のある者の法的能力の平等を保障する観点から、本人の意思決定を支援する仕組みへの転換が求められています。

利用を検討している方へ

 改正法案が成立し、新制度が施行されるまでには、まだ2年程度の期間があります。この間に、以下の点について検討することをお勧めします。

 はじめに、現時点で成年後見制度の利用が必要かどうかを慎重に判断することです。施行まで待てる状況であれば、新制度の方がより柔軟に利用できる可能性があります。

 次に、任意後見制度の活用も検討してください。本人が元気なうちに自分で後見人を指定する任意後見制度は、今回の改正の影響を受けません。本人の意思を最大限尊重できる制度として、引き続き重要な選択肢です。

 また、家族間で将来の支援について話し合い、本人の意思を文書で残しておくことも有効です。どのような支援を望むのか、誰に支援してほしいのかを明確にしておくことで、必要になったときにスムーズに対応できます。

まとめ

 成年後見制度の大改正により、利用者が必要な期間だけ必要な範囲で制度を利用できる柔軟な仕組みが実現すれば、これまで利用をためらっていた方々にとっても、より身近な制度になると期待されます。

 改正法案は2028年度中の施行を目指して、現在国会で審議中です。施行までの間に、具体的な運用方法が明らかになってくるでしょう。

 成年後見制度の利用を検討している方、ご家族の将来に不安を感じている方は、制度に詳しい行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。行政書士は、任意後見契約の作成支援や、成年後見制度に関する情報提供を通じて、皆様の権利擁護をサポートします。

※ 記事内の認知症高齢者数及び成年後見制度利用者数は厚生労働省令和7年度推計によるものです。

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