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パソコンで遺言書を作れるように?新制度「保管証書遺言」を解説

パソコンで遺言書を作れるように?新制度「保管証書遺言」を解説

公開:2026/8/13 12:08

遺言書というと、現在は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が一般的です。

自筆証書遺言は、自分で作成できる反面、本文を本人が手書きしなければなりません。公正証書遺言は公証人が作成するため確実性が高い一方、公証役場との打ち合わせや証人の手配などが必要になります。

2026年6月に成立した民法等の改正によって、ここに新しい選択肢が加わることになりました。

名称は「保管証書遺言」です。

パソコンなどを使って作成することができ、作成した遺言を法務局で保管する仕組みです。

自筆証書遺言との大きな違いは「本文もPC使用OK」

現在の自筆証書遺言では、財産目録についてはパソコンで作成することができますが、遺言の本文は本人が自筆しなければなりません。

短い遺言であれば、それほど大きな負担ではないかもしれません。

しかし、財産の承継方法を細かく指定したい場合や、相続人以外への遺贈を含む場合など、内容によってはかなりの文章量になります。

高齢になってから長い文章を書くこと自体が難しいという方もいらっしゃいます。

今回創設される保管証書遺言では、パソコンなどを使って遺言を作成できるようになります。

ただし、単にパソコンなどで遺言書を作って保存しておけば遺言として有効になる、という制度ではありません。

作成した遺言は法務局で保管する

保管証書遺言は、その名称のとおり、作成した遺言を法務局で保管することを前提とした制度です。

遺言者は、遺言内容を記録したデータなどについて、法務局に保管を申請します。

データそのものだけではなく、データをプリントアウトした書面を保管してもらう方法も予定されています。

さらに、保管申請自体をオンラインで行うことができ、一定の場合にはウェブ会議を利用した手続きも可能になります。

現在の自筆証書遺言書保管制度では、本人が法務局へ出向く必要があります。この点でも、かなり大きな変更といえます。

なぜ「全文を口述」するのか

パソコンで遺言書を作れるとなると、一つ問題が生じます。

「本人が本当に自分の意思でその文章を作ったのか」という問題です。

手書きであれば筆跡などから本人が書いたことを確認できますが、パソコンで作成した文章には筆跡がありません。第三者が文章を作成し、本人名義の遺言書を作ることも技術的には可能です。

そこで保管証書遺言では、遺言書保管官による本人確認に加えて、原則として遺言者本人が遺言の全文を口述する仕組みが設けられます。

法務局が単にデータを預かるのではなく、本人がその内容を認識し、自分の意思で遺言していることを確認するわけです。

なお、財産目録については、遺言書保管官が本人に閲覧させるなどの方法によって口述を不要とすることができます。また、発話による口述が難しい場合には、通訳人による通訳や自書による方法も認められています。

相続が始まった後の手続きも変わる

保管証書遺言には、遺言者が亡くなった後の手続きにも特徴があります。

まず、家庭裁判所による「検認」が必要ありません。

検認とは、相続人に遺言の存在や内容を知らせるとともに、遺言書の状態を確認するための手続きです。自宅などで保管されていた自筆証書遺言では、原則として検認が必要になります。

保管証書遺言は法務局で保管されているため、この手続きが不要になります。

また、遺言者があらかじめ指定した人に遺言の存在を通知する仕組みも設けられます。

せっかく遺言を作っても、相続人がその存在を知らなければ使われない可能性があります。法務局での保管と通知を組み合わせることで、そのような事態を防ぐことが期待されています。

公正証書遺言が不要になるわけではない

パソコンで作成でき、法務局で保管され、検認も不要ーここまで見ると、「それなら公正証書遺言は必要なくなるのでは」と思われるかもしれません。

しかし、両者は同じものではありません。

公正証書遺言では、公証人が遺言者の意思を確認し、法律上の方式に従って遺言書を作成します。

一方、保管証書遺言では、本人確認や口述による意思確認が行われますが、法務局が遺言内容について法律相談をしたり、相続関係を踏まえて内容を考えてくれたりする制度ではありません。

誰に何を相続させるのか、遺留分をどう考えるのか、遺言執行者を指定するのかなど、遺言の中身については別に検討する必要があります。

したがって、新制度が始まった後も、財産や家族関係が複雑な場合などには、公正証書遺言が適しているケースは残るでしょう。

すぐに利用できる制度ではない

注意したいのは、保管証書遺言はまだ利用できないということです。

改正法は2026年6月24日に公布されましたが、保管証書遺言に関する部分の施行日は、公布の日から3年以内の範囲で政令によって定められます。

オンライン申請やウェブ会議を含む新しい仕組みですから、実際の運用にはシステムの整備なども必要になります。

「パソコンで遺言書を作れるようになった」というニュースを見て、現在すでに作成できると誤解しないよう注意が必要です。

現時点で遺言書を作成する場合は、従来どおり自筆証書遺言や公正証書遺言などの方式を利用することになります。

遺言の選択肢が一つ増える

これまで、遺言書を作ろうとしたときに「自分で手書きするか、公証役場で作るか」という二つの方法を比較することが多くありました。

保管証書遺言が始まれば、その間に新しい選択肢が加わることになります。

特に、手書きすることに負担を感じているものの、自分で遺言内容を作成したい方にとっては、利用しやすい制度になる可能性があります。

一方、遺言書で大切なのは作成方法だけではありません。形式上有効な遺言書であっても、その内容によって相続人間に問題が生じることがあります。

どの方式を選ぶかと同時に、「誰に、どの財産を、どのような理由で残すのか」を考えておくことが大切です。

当事務所でも、新制度の施行時期や具体的な手続きが明らかになりましたら、改めてお知らせします。

参考

法務省「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)―遺言制度の見直し」

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